起き抜けの胃に煙が浸透して吐き気がした。ナホトカの朝は寒い。すっかり冷めてしまったコーヒーと裏腹に心臓はまだ握られたように脈打っている。誰もいない静寂に、視線を歓声をさっき見た夢のように思い出そうとして、笑ってしまう。重ねた音符。揺れるタクト。ねぇ、キミも居ただろうか?
つぶやいて。また笑う。希望と願望。混ざり合って溶け出した液体。霧散。
振り返ると彼が筆箱の中で寝息をたてていた。つけっぱなしのディスプレイが机上をぼんやりと照らして、まるで幕が降りたあとのステージみたいだ。ああ、まだ頭は眠っているらしい。溜息。二本目の煙草に火をつけて、覗き込む。眩んだ視界の端、ひとつのメールが届いていた。
イラスト:momo_shiro(上手な方) かはる(へたっぴな方。全力です)