あらすじ:母から有子に電話が入った。「硫黄島から純一さんの手紙が帰って来る…」純一とは、父のたった一人の兄で、太平洋戦争末期に学徒出陣で出征し、南方戦線で死亡したといわれていた。子供の時、祖父母に、戦死した伯父のことを聞こうものなら、たちまち後悔させられた苦い思い出。アメリカから戻ってきた手紙が、我が家の疑問を解き明かしてくれるかもしれない。有子は、百八通の焦げたような匂いの手紙や葉書を時系列に並べ、読み始めた。それは、松田家の戦後失ってきた家族関係の糸を紡ぐものだった…。実話をもとに、戦死者家族の60年目の肖像を描く。