ジェシカを失った僕は毎晩のように酒をあおっていた。海馬にこびりついた君の記憶が僕の扁桃体を刺激するから。僕は必死に日常から逃避した。今日もまた、隣町の居酒屋でうな垂れている。 「――牛スジいかがですか?」 そんな僕に掛けられた、懐かしい声。僕は驚いて顔を上げる。(―――サユリ…!)ハイスクール時代を共に過ごした彼女は、ちっとも変わらない笑顔で牛スジを薦めてきた。「逃げちゃダメ。生きる方が、戦いなのよ。」 彼女に支えられた僕は、二度と立ち入ることは無いだろうと思っていたあのバーへと向かった。忌まわしい記憶との対峙だ。
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