もうすぐ私はすべてを忘れる。
けれども愛した日々は、消えはしない。
50歳のアリスは、まさに人生の充実期を迎えていた。
高名な言語学者として敬われ、
ニューヨークのコロンビア大学の教授として、
学生たちから絶大な人気を集めていた。
夫のジョンは変わらぬ愛情にあふれ、
幸せな結婚をした長女のアナと
医学院生の長男のトムにも何の不満もなかった。
唯一の心配は、ロサンゼルスで女優を目指す次女のリディアだけだ。
ところが、そんなアリスにまさかの運命が降りかかる。
物忘れが頻繁に起こるようになって診察を受けた結果、
若年性アルツハイマー病だと宣告されたのだ。
その日からアリスの避けられない運命との闘いが始まる──。