日蓮主義と言えば、八紘一宇を訴えて世界侵略と世界征服を画策した田中智學や、一生一殺をスローガンに政府財界要人暗殺の運動を進めた井上日召など国家主義的な法華右翼のイメージが強い中、きわめて異色な存在として、左翼日蓮主義者として労働運動や社会主義運動に参加した妹尾義郎(せのうぎろう)がいます。同じ日蓮主義で右翼と左翼がいるという事自体に違和感を感じる人は多いと思いますが、実は、右翼とか左翼というのは方法論の違いで、根本は法華経で世界を統一(政治界も宗教界も)しようという原点は共有していたのです。妹尾は戦前、戦後を通じて自らの左翼日蓮主義的立場を貫き、最後には共産党にまで入党するという経緯を辿ります。