バッハは同時代のイタリアのヴィヴァルディらによる協奏曲を、オルガンやチェンバロ用に編曲するなどして熱心に研究していました。そして本来、ソロ楽器と伴奏側の合奏のかけ合いである協奏曲を、1台の鍵盤楽器で表現しようとしました。そうした試みのひとつが「イタリア協奏曲」の通称で親しまれている「イタリア趣味によるコンチェルト(原題)」です。バッハはこの曲を上下2段に分かれた大型のチェンバロで弾くことを想定していました。2段ですからソロと合奏の違いをはっきり打ち出しやすいわけです。こうした意味では“協奏曲”というより実際は、協奏曲的な形成原理をもったソロ器楽曲とした方が正しいでしょう。