「ヒトです!」
博士からそう告げられたクンナちゃんの顔に、狼狽、というものは一片として無かった。後ろから見守るサーバルちゃんの声にも、これと言った感情は芽生えていないようだった。
クンナちゃんの裡には、また別の情念が浮かび上がりつつある。博士と助手に命じられ、レシピを見ながら作ったカレー。しかし、出来上がった代物は、明らかにレシピとは異なるものではないか。
ベイリーフ?シナモン?南蛮の言葉なのかもわからぬ、横文字の食材を、クンナちゃんは逡巡なく手に取り、どこか空へと言葉を投げかけながら調理し始めた。
これには、サーバルちゃんや葱ちゃんも絶句。文字は読めずとも、添付されたホトグラフの内容とはかけ離れていたからだ。
クンナちゃんの陶器の如、円やかな頭の中では明確なイメージが想起されていく。何故、このようなイメージがあるのか。これは想像なのか、記憶なのか。
もはや、自身が何のフレンズかなど、どうとでも良かった。ただ。ただ、一つだけ許されるのならば、カレーを作りたい。カレーで、この鳥類のフレンズどもを虜にしたい。
「ヒトかなんて、どうでもインド!クンナのカレー、食べてクンナい!?」
一方、かばんちゃんはセルリアンに喰われた。