経済産業省有識者会議が5月16日とりまとめた「エネルギー基本計画」改定案は、再生可能エネルギーの主力電源化を打ち出したものの、2030年度時点の再生エネや原発の電源構成は従来の目標を維持。一方で、目標の達成に必要とされる原発の新増設や建て替えの判断は先送りされるなど実現性に乏しい内容となり、委員からは失望の声も上がった。 「原子力も再生エネもはっきりしない。国民に分かりづらく、各エネルギーへの信頼が低下しかねない」。福井県の西川一誠知事は、委員として臨んだ16日の会議で計画案を批判した。 現行計画は、全電力に占める原発の比率について30年度時点で全体の20~22%と見込む。実現には原子炉30基程度の稼働が必要で、経産省は既存の原発の運転を60年間に延長すれば達成できると試算する。だが、福島第一原発事故後の原発再稼働は、自治体の反発が強いことなどから進んでおらず、新規制基準の下で再稼働にこぎ着けたのは8基にとどまる。電力業界にさえ「20~22%は非現実的だ」との見方が多い。改定案は50年までの長期戦略も初めて盛り込み、「50年に温室効果ガス80%削減」を掲げる政府目標の達成に向けて原発を「選択肢」と位置づけた。だが、老朽化が進み、既存の原発の稼働をすべて延長しても50年時点で稼働中なのは20基に満たない。中長期で一定の原発活用を見込むのであれば、新増設や建て替えは避けて通れない。昨年8月に始まった見直し議論では、原発推進、反対のそれぞれの立場の委員が「逃げるべきではない」と意見をぶつけ合った。 しかし、事務局の経産省が最終的にまとめた改定案は、原発への対応について「安全性・経済性・機動性に優れた炉の追求」との表現にとどめ、新増設や建て替えについては明示しなかった。世論の批判を恐れて、及び腰の姿勢がうかがえる。
毎日新聞2018年5月17日東京朝刊
https://mainichi.jp/articles/20180517/ddm/008/010/143000c