ニーチェ詩集 浅井真男 訳 彌生書房 世界の詩 41 より
新しい海に向かって
かなたへ わたしは行くことを欲する。それ以来わたしは
つねにみずからとわたしの舵あつかいをたのみとする。
大海はひろびろと横たわり、遠い青みのなかへ。
わたしのジェノヴァの船は突き進む。
なべてのものがわたしに向かって新しく、
ますます新しく光りかがやく、
真昼は空間と時間の上にまどろんでいる。
ただおまえの眼だけが 途方もない巨大さで
わたしにそそがれている、無限よ!
ジリス・マリーア
ここにわたしは座って、待ちに待った、
だが待つべきものもなく
善と悪の彼岸に、あるときは光を楽しみ
あるときは影を楽しみながら
すべてはただ、たわむれ すべては湖
すべては真昼 すべては目的のない時間
そのとき、突如として 友よ 一は二となった
そしてツァラトゥストラが わたしのかたわらを通り過ぎた・・・