あの日、大地震が起こった後、迫り来る絶望的な状況の中で、それでも人々を助けようと奔走し、また自らの使命を感じて命を投げ出していた人たち──。
彼らは、一切を無力化する圧倒的な崩壊への流れの中で、それに抗い、守るべきもの、求めるべきものに応えようとしていました。混乱する事態の中で、新たな秩序さえ生み出そうとしていました。それは、「崩壊の定」の下にありながら、その流れと逆行する確固とした力の発現でした。
ではいったい、何がそんなことを可能にするのでしょうか。
それが「魂」というものだと私は思います。
「魂」とは、すべてを崩壊に向かわせ、拡散させる世界の流れをせき止め、一つに統べようとする生命の核心であり、意志の根源です。
普段、私たちの前には姿を現すことなく隠れていながら、実は、すべてを支えてやまないもの。心の奥深くに存在し、私たちの大本で、時を超越し、世界のつながりを知って、はたらき続けているものです。
魂に触れるとき、どんな苦難や試練の下でも、それに翻弄されることなく、自分を超えて、刹那を超えて、今何が本当に必要なのか、その「呼びかけ」を捉えることができます。そして本当に守るべきもの、求めるべきものを見出すことができます。
(高橋佳子著『希望の王国』より抜粋)