2018年11月15日 18時11分
アメリカで最も権威のある文学賞「全米図書賞」の翻訳文学部門に、芥川賞作家で現在ドイツに住む多和田葉子さんの「献灯使」が選ばれました。日本語で書かれた本の翻訳がこの賞を受賞するのは1982年に樋口一葉の作品集の翻訳が受賞して以来36年ぶりです。ニューヨークで14日、ことしの全米図書賞の授賞式が開かれ、このうち「翻訳文学部門」に多和田葉子さんが日本語で書いた小説「献灯使」が選ばれました。
多和田さんは東京生まれの58歳で、早稲田大学を卒業後、昭和57年にドイツに移り住み、平成5年に「犬婿入り」で芥川賞を受賞し、ドイツ語でも数多くの小説やエッセーなどを発表し、2016年にはドイツで最も権威のある文学賞「クライスト賞」も受賞しています。
今回受賞した「献灯使」は、大地震や原発事故といった大災害に見舞われたあと鎖国状態になった日本が舞台の近未来小説で、100歳を超えて健康なまま生き長らえる作家と、歩くことさえままならないひ孫の姿を通じて、時代を覆う閉塞感(へいそくかん)を描写しています。
全米図書賞には、1971年に川端康成の「山の音」、1982年に樋口一葉の作品集を、英語に訳した作品などが選ばれていて、日本語で書かれた本の翻訳がこの賞を受賞するのは、36年ぶりです。