2019年1月24日 18時21分今から50年前、東大紛争の最中、安田講堂に立てこもる学生らを機動隊が排除した事件。入試も中止となる前代未聞の事態となりました。この事件の内幕を当時の大学執行部が秘密裏に集まり語り合った音声テープが見つかりました。専門家は東大紛争の新たな一面が見える貴重な史料だとしています。1968年に医学部生のストライキに対する大学側の不当な処分に始まった東大紛争は、大学の古い体質に不満を持つ全学部の学生に広がりました。大学は1969年1月18日に安田講堂を占拠する学生らを排除するため、国に要請して機動隊を導入。多くの負傷者が出て、この年の入試が中止に追い込まれる事態となりました。当時の大学執行部だった加藤一郎総長など若手教授6人が1970年6月に集まり、事件の内幕を語り合った13時間以上にわたる録音テープが、東京大学の文書館から見つかりました。この中では、紛争を収拾して入試を実施するため、加藤総長が当時の坂田道太文部大臣と知人宅で密会を重ねたことや、機動隊導入の1か月ほど前、執行部が南原繁や大内兵衛といった著名な名誉教授らから「入試をやらないと東大は滅びる」と叱責されたり、紛争解決のため「早く警察を入れろ」と言われたりしたと証言しています。また、1969年1月18日に安田講堂を占拠する学生らを排除するため機動隊を導入し、文部省との交渉の末、入試が中止に至った結果については、坂本義和教授が「入試をやるかやらないかは大学が決める性質のものだ。大学が自治能力がないことを認めるようなことだ」と主張したのに対し、加藤総長が「政府とけんかしてやった場合、いったいどれだけ警察が守ってくれるのか。警察が守らなければ粉砕されることは目に見えていた」と応じています。テープからは、国の力を借りて機動隊を導入したものの、結果的に入試中止に追い込まれた東大執行部の教授らが苦悩した当時の状況を率直に語っている様子がうかがえます。東大紛争では、学生側の証言は残されていますが、当時の執行部側の詳しい資料はありませんでした。