帝国暦487年/宇宙暦796年5月中旬頃、難攻不落と呼ばれたイゼルローン要塞が、ヤンの第13艦隊により失陥する。
要塞司令官のシュトックハウゼン大将は捕虜になり、駐留艦隊司令官のゼークト大将は玉砕した。
駐留艦隊の残余は、イゼルローン要塞のトール・ハンマーの射程の外に出て、そのまま帝国への帰途に着く。
彼らが帝国への帰途に着けたのは、ヤ第13艦隊のヤン司令が、4度目のトール・ハンマー発射を行わなかったのが大きい。
こうして敗走する帝国軍の中で、旗艦からシャトルに乗って無断退出したパウル・フォン・オーベルシュタイン大佐が居た。
彼は数名の部下とともにシャトルに乗っていて、通信によってイゼルローン要塞失陥とゼークト大将の戦死を知った。
うろたえる部下に対して、「イゼルローンなどいつでも取り返せる」と豪語したが、誰もその言葉を信用するものはいなかった。
6月に入り帝国首都星オーディンにイゼルローン要塞失陥の報が入り、帝国軍上層部に激震が入る。
失陥の報が遅れたのは、通信を使わず、直接高速艦の到来で、失陥の報告が行われたからである。
通信を使わないのは、途中で帝国のどこかで傍受されることによって、イゼルローン要塞失陥が帝国の威信を傷つけ、
国内の共和主義者などに好機を与えて、支配のたがが緩むのを防ぐ狙いがあったものと思われる。
しかしこれにはイゼルローン要塞失陥の現場責任者のトックハウゼン大将とゼークト大将はいなかった。
代わりにゼークト大将の幕僚で唯一の生き残りであるオーベルシュタインに失陥の責任をとる事となった。
責任を取ることは処刑になることを意味して、オーベルシュタインの死は免れない状況にあった。
そこでオーベルシュタインはローエングラム伯に近づくことで、この状況から逃れることを画策するのであった。
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