最近ラボの様子がおかしい。
どうやらかのせなさんの研究が遅々として進まぬことが原因なようだ。
先日も苛立ちを覚える生徒が数人、私のもとに直訴に来た。
彼らの言い分はこうだ。現状無効化されている設備もまだ使いようはある。
例えば出力を上げれば成果を上げられるのではないか。
完全開放は及ばずとも、ほんの一枚、二枚突破できるだけで皆の士気は上がると。
気持ちは分かる。だが焦っては逆効果なのだ。
仮にリミッター解除で僅かの成果が得られたとしよう。
しかしそれは相手にみすみす改良データをくれてやるようなものだ。
今手を焼いているシステムが更に強固になってしまう。
逆に言えば水面下で計画を進め、一気に開放へこぎつければ、簡単に対処はできまい。
新システムが構築するまでかのせなさんは無防備、かつデータ収集のため突破されると分かっていても実験に応じなければならない。その時のため今は耐えねばならんのだ。
説得により渋々引き下がった生徒たちだが、どうもまだ諦めていない様子だ。
さて、本日はかのせなさんたっての希望により、私も演舞に加わることになった。
誰かと一緒は久しぶりだとはしゃいでいる。この笑顔には応えてやらねばなるまい。
問題は功を焦る者達が何かやらかさないかだ。特に今日は私も舞台に立つのだ。
万一、紳士スキャンのリミッター解除なぞやられると面倒なことになる。さて、どうしたものか。