高校の頃の話。
俺の実家はスッゲー山奥で、麓の高校まで通うには片道四里(約16Km)以上の山道をチャリで下って行かなきゃならない。
当然、帰りは四里以上の道のりをチャリで上っていかないといけない訳で。
高一の時の学園祭で、用意がすっかり長引き、下校したのが七時前だった。
普段は家が遠い事もあり、最低でも四時には下校していた俺だが、この時は高校生活初めての学園祭ということもあり、時間を忘れていた。
「こりゃあ、家に帰ったら十時過ぎだな」と思った俺はとりあえず家に
「遅くなるから多分ツレの家に泊まる。先に寝ててくれ」と電話を入れて友達の家に行って飲む事にした。
次の日が日曜だったので、泊まっていっても問題ないだろうと思って友達連中と一緒に飲んでいたのだが、あまりに騒ぎすぎたのか、相手の親に飲んでいたのがバレ、全員追い出されてしまった。
向こうの親は俺の家が四里以上も離れた山の上の家の子だと知らない。
俺の実家が山の上の寺だと知っているヤツが
「お前んち遠いんだから、俺んとこに泊まってけよ」と言ってくれたのだが、その時の俺は酒のいきおいもあったのだろうが、
「いいよ。月も出てるからチャリ押して帰るよ」と言って帰ってしまった。
当然、酔っ払った俺に四里以上もの山道を登っていけるはずなど無く、途中で気持ち悪くなって吐いてしまった。
吐いた所で、山道の三分の一は登ってしまっていたので助けなど期待できない。
そもそも、参拝者の少ないこの時期はオヤジが檀家さん家に行くときと母がスーパーに買出しに行くとき以外は車なんて一台も通らない。
こんな夜中じゃあ、それすらないだろう。
そう思った俺は、夜明けまでに家に帰ることを諦め、酔いが醒めるまで山で休む事にした……
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