07月27日 05時55分
熱帯地域を中心に世界中で年間およそ50万人が死亡している感染症、マラリアの重症化する仕組みを解明したと大阪大学のグループが発表しました。免疫に関わるヒトのたんぱく質とそっくりの物質ができて、免疫機能を抑えているということで、今後、ワクチンや治療薬の開発につながると期待されています。
マラリアは、結核、エイズとあわせて世界三大感染症と呼ばれ、世界で毎年およそ50万人が死亡しています。
熱帯地域の蚊が媒介する「マラリア原虫」という小さな寄生虫が原因ですが、重症化する仕組みはわかっていません。
大阪大学免疫学フロンティア研究センターの荒瀬尚教授らの研究グループは、赤血球に感染したマラリア原虫が作り出すたんぱく質を強力なX線で解析したところ、免疫活動を抑えるヒトのたんぱく質とそっくりの形をしていることを突き止めました。
このため、ヒトの免疫細胞がマラリア原虫を外敵として認識できなくなり免疫機能が抑えられてしまい、重症化すると考えられるということです。
研究グループは、このたんぱく質を標的にしてワクチンや治療薬を開発することにつながるとしています。
病原体がヒトのたんぱく質の形をまねて免疫細胞をだまし攻撃を抑える仕組みは、ウイルスでも見つかっています。
荒瀬教授は「マラリアの研究を通して病原体が免疫機能に与える影響の解明につなげ、ほかのウイルス感染症やがんの治療薬の開発にも結びつけたい」と話しています。