【強引の魔女ミイティナ・フォルテリス】
__気が付くと、スバルは草原に立っていた。
「__」
スバルは辺りを見渡す…が、周りには
何も無く野道が続いていた。
聞こえてくるのは野原が揺らぐ音。
風の音。スバルの心臓の音。
「_ここは…」
実際に見たことがある場所だ。
しかし、なぜか思い出せない引っ掛かりが。
スバルが呟くと背後に何かを感じた。
咄嗟にスバルは後ろへ振り向く。
スバルの目に映るその正体。
全身真っ黒のようなドレスに黒髪と
少し白髪が混ざったような髪を
ツインテにしている。
前髪が長くこちら側から見た
表情が確認できない。
その瞳に映るのは___
「やあ_」
彼女の口から出た言葉だ。
彼女はふりふりと手を振った。
しかし、スバルは声が出せなかった。
緊張?警戒心?いいや、違う。
なぜ彼女がこの場に居るのか…だ。
「どうして…お前が……」
「__?」
彼女は首を傾げる。
彼女の目に映る真っ赤な瞳がこちらを
覗かせている。
「君と話がしたいから…これで理解したかな?」
彼女はそう口にすると指を鳴らした。
世界が歪む。
「ここは何処だ…」
スバルの頭の中では疑問が沢山ある。
一度頭の中を整理する必要があった。
「安心したまえ。君の仲間はこの空間の
別の場所に移転してある。大丈夫さ、
君の仲間には一切手を出さない。
そう誓うと約束しよう」
彼女はそう言うと笑みを浮かべた。
その笑みは本物だろうか。
「お前は……誰だ」
スバルは続けて質問をする。
彼女は口に手を当て、
「ああ、これは失礼したよ。
僕は強引の魔女ミイティナ・フォルテリス。
無理も構わず、強気で抵抗や反対を
押しきってやらなきゃ物事が進まないでしょ?
僕はそういうのが大好きなんだ。
だから、強引に宜しく頼むよ」
「強引の魔女…」
聞いたことの無い言葉だ。
強引の魔女…スバルが見た魔女では、
強欲の魔女、憤怒の魔女、傲慢の魔女、
暴食の魔女、色欲の魔女、怠惰の魔女、
__そして、嫉妬の魔女だ。
「なにか考え事をしているようだけど
何事も強引に話を進むべきだと思うんだ。
まあ、座りたまえ。お茶を用意するよ」
「____」
そして、スバルと強引の魔女とのお茶会が
始まろうとしていた。