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sm37632683 mylist/68640421 次
sm37662661「シレジア四天馬騎士ってなんか響きがかっこええな」
琴葉茜は寒さにかじかんだ手に息を吹きかけながら言った。「シレジアではペガサスをうまく扱える者が年齢に関わらず部下を率いるのです。その……と、特に秀でた四人がそれぞれの城の天馬騎士団を率いていて……」フュリーは愛馬を慣れた手つきで撫でながら厩舎へ入れる。それにペガサスは大人しく従い、素人目の茜から見ても信頼で結ばれているようだった。「やっぱあれか。ククク、やつはシレジア四天馬騎士の中でも最弱……みたいなやつあるんか?」自分でもいつも場当たり的な生き方してるなと思う茜だがその時ばかりは冗談のつもりで言った言葉を本気でなかったことにしたかった。「……私です。四天馬騎士最弱は私なのです。他の三人には一度も勝てたことがありません」うつむいたフュリーが呟いた言葉に茜は自分が地雷を踏み抜いたことを察した。「部下もまともに統率できず迷惑をかけてばかりで……私はダメなんです。お姉さまに遠慮してシルヴィアに遠慮してほかの人のことは信じるのに自分には嘘をついて。戦場でもいつも独りぼっちだし……。だからこの子に……ペガサスに愚痴を言うことしかできなくて」手綱を持ちながら肩を震わせるフュリーにペガサスがそっと涙をぬぐうように顔を寄せた。「変なこと言ってごめんな。せやからな、そんな泣くなって。ほら、クッキーやるから泣き止んでな」クッキーを食べると落ち着いたのかフュリーはすみません、と小さく謝った。「うちはフュリーがそんなダメな子やとは思わんで。シグルドもレヴィンもみんな頼りにしてるし信じてるんや。だからフュリーも自分に自信もってな?」「茜さんは不思議な人ですね。心の中の不安が嘘みたいにすっきりしました。このクッキー……おいしかったのでまた自分に自信が持てなくなったら食べに来てもいいですか?」
クッキーは使ってもなくならないので忘れてください。