10月14日曇り。すこし肌寒さを感じながら、初めてとった半休で帰宅し、いそいそと歌姫周回をする私の元に、ガシャ更新の通知が入った。
「ああ、今日更新だったのか」
PCのファンが微かに聞こえるだけの部屋で、一人つぶやく。
先日のプライズ復刻ガチャでユッキを天井し、プレミアカットを解放した後、アニバーサリー限定闇鍋ガチャでプレミアカットのユッキを引くという、私が常務だったらスカウトしてきたPをガラスの靴で殴っていたかもしれない出来事の熱気も冷め、SDカードの半分を占めているウィンターFドライバーズのMVの録画も終わったスマホ(注:携帯情報端末。異世界に飛ばないものを指す)のように落ち着きを取り戻していた。
Twitterのタイムラインが流れる。
※こんな時間にどれだけの人が更新しているのだ?
「オイオイ、ユッキじゃねーか」
まさか、早すぎる―!?
タイミング的にそろそろだと思っていた。通常のMVとして見る上で、全力全開サマーサプライズはやや浮いてしまうのだ。原田美世ちゃんの水着ください。
回すことは確定している。しかし問題はジュエル残量だ。
アニバーサリーのくじである程度回収できたものの、天井まで回すには心もとない。
当方オデッセイがない以上、限界まで目一杯回すしかないのだが、86のパンダ……いやパンクしないように祈るばかりである。
「この姿、ずっと見ていられる」
タイムラインで誰かがつぶやいた。
確かに限定のサマーサプライズのようなポニテ、生足魅惑のチラリズムを醸し出しながら、下品さを感じさせないパンツスタイルに長いユニフォーム、年齢不相応に幼く、そして長髪ながらボーイッシュ感を出すキャップスタイルという全部載せ。個人的には上着を巻いたお腹から腰回りに生じる「しわ」に、フェティシズムを感じるのだが、そんな姫川友紀満漢全席をずっと見ているのは難しい。100時間も見ていられないだろう。
タイムラインに響くPのため息、どこからか聞こえる「今回も天井だな」の声。
アニバーサリーで手にした限定、感動、それを今のジュエルで手に入れるのは不可能と言ってよかった。
どれくらい経ったろうか。モデルビューアから目を離した。
「やれやれ、キャラバンを走らないとな」
ガシャのページに戻った時、ふと気づいた。
「あれ……?チケットがある……?」
暫時、唖然としていたが全てを理解した時、私の心には雲ひとつなかった。
「引ける……引けるんだ!」
ちひろさんからチケットを受け取り、こんなこともあろうかとガシャを引く。
アニバーサリーで流した涙と悔しさは無駄ではなかったのだった。
翌日ち