小学校高学年までうちは貧乏な田舎の家だと思ってたら、実は庄屋の家系で俺が産まれたのを境に没落したらしい。
当時たまに偉そうに訪ねてくる爺さん(祖父の弟=大叔父)とこは、逆にそれくらいから一気に裕福になって、自分が本家のように振舞っていたんだと。
そこに大叔父の孫で嘉兵衛ってのがいた。
これがまた嫌な奴で、金持ちを鼻にかけてさんざん俺と弟妹を見下してた。
この嘉兵衛と俺の名前はよく似てる。
実は俺の出生時に大叔父が強引にその名前にしたんだとか。
曰く本家の長男にふさわしい名前、嘉兵衛の名前とあわせて高名な占い師に用意してもらった、俺はアニキ(祖父・故人)の弟だぞ、などなど……
田舎で血筋にうるさいとこだったんで、大叔父の言い分が通っちゃった結果が今の名前、嘉衛門だったらしい。
ところがそれを境に両家の経済状況が逆転、俺と嘉兵衛が物心つく頃には親父世代の頃までと力関係が逆になってた。
さすがに何人かの親戚はこの急変を疑ったんだが、何の証拠もないからどうしようもない。
両家の状況が再度動く直前、大叔父は援助と称して金をちらつかせて累代の土地を買い取ろうとしてたらしい。
……と、ここまでが前提……
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