恋人が途方もなく美し過ぎたので絞め殺してしまった男。
死体を廃屋の鴨居に引っかけてきて、いつ見つかるか、いつ見つかるかと楽しみにして夕刊を読んでいる。
ところが背広男の縊死体発見の記事。驚いた男は夢中でその廃屋に駆けつける。
そこにぶら下がっていたのは、紛う方ない自分の死体だった。
茫然とした男の背後から女の声が聞こえてくる……
どこかの公園のベンチである。
眼の前には一条の噴水が、夕暮の青空高く高くあがっては落ち、あがっては落ちしている。
その噴水の音を聞きながら、私は二三枚の夕刊を拡げ散らしている。そうして、どの新聞を見ても、私が探している記事が見当らないことがわかると、私はニッタリと冷笑しながら、ゴシャゴシャに重ねて押し丸めた。
私が探している記事というのは今から一箇月ばかり前、郊外の或る空家の中で、私に絞め殺された可哀相な下町娘の死体に関する報道であった。
私は、その娘と深い恋仲になっていたものであるが、或る夕方のこと、その娘が私に会いに来た時の桃割れと振袖姿が、あんまり美し過ぎたので、私は息苦しさに堪えられなくなって、彼女を郊外の××踏切り附近の離れ家に連れ込んだ。
そうして驚き怪しんでいる娘を、イキナリ一思いに絞め殺して、やっと重荷を卸おろしたような気持ちになったものである。万一こうでもしなかったら、俺はキチガイになったかも知れないぞ……と思いながら……
★文字起こし:http://urban-legend.tsuvasa.com/yumeno-kyusaku-issitai