うちの父親は三年前に肺がんで亡くなったんだが、生前は骨董集めを趣味としていた。といってもうちにそんなに金があるはずもなく、骨董市などで買った安い小物ばかりで値の張る皿物や掛け軸なんかはなかった。
父がもういけないというとき、病院のベッドで長男だった俺に
「骨董は仏間の押し入れにまとめてあるから、骨董屋の大黒堂に下げ渡してやってくれ、まあいくらにもならんだろうが……それから、風呂敷に一つ小物の骨董をまとめてあるから、これは俺の初七日あたりにでも坊さんに渡して、お焚きあげしてもらってくれ」
と奇妙なことを言った。
俺が「どうしてだい、それはお金にならないものかもしれないけど、ただ捨てるだけでいいんじゃないか」と問うと、父は
「いや風呂敷の中のものは、よくない骨董なんだ。長年かかってさわりを押さえる方法を覚えたんだけども、お前らには無理だろうから。必ずそうしてくれよ」と、病みついても冗談ばかりだったのに、いつになく真剣な顔でそう言った。
父の葬式が済んでやっと落ち着いた頃に、骨董屋を呼んで処分を任せたが……
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