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sm37924247 mylist/68640421 次
sm37997001セリス軍は破竹の勢いで進撃した。イザークを帝国の支配から取り戻しイードのダークマージを駆逐しトラキア半島のフリージ家を追い払ってマンスターまでその手を伸ばした。はじめは小さな勢力だった解放軍も地方の協力を得て今では城に入りきらないほどの集団になった。リーフとセティのレジスタンスも合流し士気も高い。マンスターを襲ったトラキア王国と事を構えることになったがどちらに勢いがあるかは明白だった。規模だけならシグルドたちよりもずっとでかいな、と琴葉茜は城の食堂で食事をしながら思った。「それでね、バッタバッタと敵を倒してるときに折れちゃったんだよ……風の剣が!」隣では葵が懐かしい話をしていた。こんな話をしていたからシグルドたちと過ごした日々を思い出したのだろう。「えーッ!? そんな話聞いたことなかったなぁ。お母様いつもシグルド様やアイラ様の話ばかりして自分のことは話さなかったから」フィーが口元を手で覆いつつも目を輝かせている。「む、アイラ母様はどんな人だったんだ」その横でラクチェがフィーに顔を近づけた。「えっとね、動いたと思ったら敵兵が倒れてたとか一振りで五回切ったとか冗談みたいな話ばかりだったけど……ラクチェを見ていたら嘘じゃなかったんだって思った」それを聞いて茜は思わず笑ってしまった。嘘みたいなほんとの話は大体面白い。「ラクチェちゃんのご両親のアイラさんとホリンさんはね、二人とも好きあってるのは分かりきってるのにお互い素直になれなくて……」葵がうっとりした顔で語りだしている。「ねね、アカネ! あたしの両親のことは知ってるの?」テーブルにパティが身を乗り出した。その青い純粋な目を見ていて茜は思った。シグルドたちよりもずっと距離が近いなと。貴族や騎士だとかめんどくさいこと抜きに気楽に話せることなんてあんまりなかったかもしれない。葵がこんなに生き生きと誰かと話してるところは見たことなかったかもしれない。茜はパティの頭をガシガシと撫でてやるとにやりと笑って言った。
「もちろん知ってるで。あいつらはな……」
無垢な子供たちにあることないこと吹き込む茜ちゃんはいないと思うので忘れてください。