俺の地元には奇妙な風習がある。その行事の行われる山は標高こそ200m程度と低い物であるが、一本の腐った締め縄のようなものでお山をぐるりと囲んでおり、女は勿論、例え男であっても普段からその山に立ち入ることは許されていなかった。
それでも、時々調子に乗ってその締め縄をくぐってお山に入ろうとする子どもが現れる。
実際俺の年の離れた兄貴の友達が、その締め縄をくぐってお山に入り込んだらしいのだが、その事実を聞きつけて来た村長連中にお堂に連れて行かれ、三日三晩眠る事すら許されない程の激しい暴行を受けたらしい。
それを聞かされて育った俺達は勿論お山に近づくような事は無かったし、俺達地元の子ども達にとってお山は恐怖の対象でしかなかった。
そんな奇妙なお山であるが、数年~十数年に一度不定期に人が足を踏み入れることがあった。
お山の木々が色を変え、突き抜けるような青空とどこか冬の匂いを想わせる風の吹き出す10月に、その年に11~12歳となる少年たちが集められ、白装束を着せられてお山を登らされるのだ。
ただ一つ、「お山に入ったら一言も口をきくんじゃないぞ」と念を押されて……
★文字起こし:
https://kowaiohanasi.net/pandora-complete