ツインターボは激怒した。必ず、かのトウカイテイオーを打ち負かさなければならぬと決意した。ターボはダービーに出られぬ。ターボはGIIIウマ娘である。諸々のレースで、勝ったり負けたりして過ごしてきた。けれども大逃げに関しては、人一倍に逆噴射であった。
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「その矢文で何をするつもりであったか、言え!」
ゴールドシップは静かに、けれども威厳をもって問いつめた。
「スピカに宣戦布告するのだ」とターボは悪びれずに答えた。
「おまえがか?」スペシャルウィークは、憫笑した。
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ターボはよろよろ二、三歩あるいて、ついに、がくりと膝を折った。立ち上る事が出来ぬのだ。天を仰いで、くやし泣きに泣き出した。真の勇者、ターボよ。今、ここで、疲れ切って動けなくなるとは情け無い。と自分を叱ってみるのだが、もはや芋虫ほどにも前進かなわぬ。もう、どうでもいいという、勇者に不似合いな不貞腐れた根性が、心の隅に巣喰った。ターボは、これほど努力したのだ。約束を破る心は、みじんも無かった。ターボは精一ぱいに努めて来たのだ。動けなくなるまで走って来たのだ。
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斜陽は赤い光を、樹々の葉に投じ、葉も枝も燃えるばかりに輝いている。ターボを、待っている人があるのだ。少しも疑わず、静かに期待してくれている人があるのだ。ターボは、信じられている。ターボは、信頼に報いなければならぬ。いまはただその一事だ。走れ!ターボ!