SDGs(持続可能な開発目標)が世界の趨勢となり、資源循環の必要性はますます高まっている。こうした中、今、注目を浴びているのが「アップサイクル」。単なる「リサイクル」ではない、文字通り、元の製品より価値を高めて再生する取り組みだ。成功すれば、環境と経済、ふたつの“エコ”の共存が可能になる。しかし、それは簡単なことではない。常識にとらわれない“発想”とそれを実現する“技術”が求められる。果たして、ゴミを“宝“に変えることができるのか? ◆捨てられる4万本のジーンズに再び命を…。過剰生産・大量廃棄に町工場が挑む 東京・足立区、町工場の一角にうず高く積まれたジーンズ。すべて「リーバイス501」で、数量は20トン・4万本にものぼる。米国西海岸で廃棄寸前だったものを買い取った。いま、その1本1本を再生するプロジェクトが始まっている。取り組むのはアパレルの下請け工場を営むヤマサワプレス(東京・足立区)。95年に創業し、店頭に並ぶ服のアイロン掛けや検品、札の取り付けなどを請け負ってきた。「下請けに甘んじるのではなく、これまで培ってきた技術を生かし、新たな可能性を追求していきたい」。山澤亮治社長(46)がプロジェクトを始めたきっかけは、近年、買われた服が一度だけ着て返品されたり、簡単に捨てられたりと、「大切に仕上げたものが粗末に扱われている」現実を目の当たりにしてきたからだという。4万本の中には、膝下部分の端切れだけというものまである。しかし、1本たりとも無駄にはしないつもりだ。洋服をはじめ、家具や雑貨の生地として再生を試みる。そして、この取り組みが一気に加速していく。三越伊勢丹をはじめ大手百貨店が賛同したことで、有名デザイナーと手を組むことになったのだ。なんと、狙うは「パリコレ」への出展と世界進出。廃棄ジーンズは、どんな服に生まれ変わるのか?過剰生産に大量廃棄の悪循環は業界全体が抱える課題。「アパレルの常識を変える」ため奮闘する町工場の挑戦を追う。