「ネイチャのこと、ライバルだと思ってるよ」
テイオーがそう言い終えてから、アタシのことを指して言ったのだと気付くまで、たっぷり10秒と少し。さっきまで弾んでいたと言って差し支えない会話は、その一言で沈黙に姿を変えた。
もう日も暮れて、視界も真っ暗。何もない空間にアタシたち2人だけがいるみたいな錯覚を起こす。
きっと聞き間違いか、そうでなければ冗談だと思った。それと同時に、テイオーがそんな冗談を言う訳がないかな、とも思った。
「あー……お世辞?励まし?……過大評価か」
「ネイチャはさぁ」
テイオーはわざわざ大袈裟なジェスチャー付きでため息をついてみせた。
「弱点はそこだよね」
「なに、それ」
「どうせそっちのトレーナーさんにも言われてるんでしょ?」
そう言われて、トレーナーさんとのやり取りを思い出す。
「自信が……ってやつ?いやいや、ネイチャさんはモブなりに現実見てるだけですから」
「そーゆーとこ」
そう言ってテイオーは、並んで歩いていたアタシを追い越してみせる。
「置いてかないでよ」もう暗いから並んで帰ろう。それ以上の意味を持たせたくなくて、努めて何でもない風にアタシは言った。
「やだね」
「アンタねぇ」
「……ボクのとなりは、キミがいい」
テイオーは振り返らずに言った。
「けど、ボクの方から後ろに引き返してやる気なんてないから……だから、せいぜい追いついてみせてよね、ナイスネイチャ」
テイオーはそう言い残すと、何の脈絡もなく走り始めた。相変わらずきれいなスタートダッシュですこと。
「……大人しく取り残されてなんてあげないっての」
呟いて、アタシも駆ける。いつか、その背に手が届くように──────
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サカナクション要素はあんまりないです
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