(おかしい…)
「次の目標は是非とも高松宮記念2連覇を目指そう!」
(絶対におかしい…
最近のトレーナーが…お洒落すぎる…!)
「ではまず年明けの…
(まずあのスーツ…
前に着ていたのなんて1セット3万そこらの粗末なものだったのに
今着ているのは明らかに生地がいい…!
それだけじゃない、大量生産品と違ってあれはトレーナーに合わせて仕立ててある…)
「練習メニューは…
(そして当然シャツも良い生地使ってるわね)
「次のレースは…
(スーツだけならわかる
このキングのトレーナーなら取材を受ける機会も多くなるでしょうし
身なりを良くしておくのは当然ね、でも…)
「並走相手に…
(遠征先で見た私服からバッグに至るまで、全部質の良いものに変わっていた…
派手さはないけど品が良くて、一言で言えば洒脱
そしてそれかどうして…)
「ここを重点的に…
(どうして尽く私の好みのデザインなのよ…!)
「というローテを組もうと思うけどキングの意見を聞かせてくれるかな」
「そうね、一つだけ聞かせてほしいのだけど」
「なにかな?」
「貴方その服どうしたの?」
「んん…!?」
「貴方最近とてもお洒落だと思うわ
まぁこのキングの隣に立つのだからそれくらいでなければ困るのだけど
気になるのは、そんなセンス貴方には無かったわよね」
「あーいやー…最近オシャレの勉強をだね」
「ふーん、ならなんてブランドなのかしら」
「え…!?あー…と…ノンブランド…?」
「おばか、このキングが服の良し悪しもわからない節穴だと思っているの?
そんな良い生地使うノンブランドなんて無いわよ」
「いや!確かにノンブランドなんだ、ただその…デザイナーがね」
「はい、デザイナーが?」
「君のお母さんです…」
「はぁ…やっぱり…詳しく聞かせてもらいましょうか」
「学園を通して俺に連絡があってね、
娘の隣に立つ者として粗末なものを着ていてもらっては困るって
社員さんがやってきて採寸されてあれよあれよという間にトレーナ室に服が送られてきて…」
「ありがたく頂戴したと」
「いやぁ無下にはできないし、俺もそうだと思っていたから」
「…ま、いいわ
貴方の身なりが良くなって悪いことなんてないのだし
でも着られているようじゃ一流とは言えないわ
もっとカッコよくなってね?トレーナー」
「はは…努力します」
「それと、『電話』してもいいかしら?」
「………お気の済むまで」
親子喧嘩を響かせるキングヘイロー