Youtubeからの転載です(
https://www.youtube.com/watch?v=AAxs21VwRbQ&t=721s)。
1885年、エルガーはジョン・ヘンリー・ニューマン枢機卿の長編詩「ゲロンティアスの夢」を
知ります。この詩は、瀕死のゲロンティアスが死への不安・恐怖におびえて神への信仰に救い
を見出し、死後の彼の魂が天使の導きにより悪魔の誘惑にも応じず浄化・昇天するという筋書
きで、エルガーは大きな感銘を受けて、この詩に音楽を付けたいと望みましたが、すぐに作曲
に取り掛かることはできませんでした。
1898年、エルガーはバーミンガム・トリエンナーレ音楽祭から新作オラトリオの作曲を依頼さ
れて「ゲロンティアスの夢」を題材にすると決めて作曲に取り掛かり、1900年6月に完成しま
した。これがオラトリオ「ゲロンティアスの夢」作品38です。
しかし、エルガーが友人からの助言により改訂を行ったためパート譜の配布が遅れて演奏者の
作品に対する理解が不足したこと、そして作品が斬新すぎて当時の観客が望んでいたヘンデル
風のオラトリオでなかったことが原因で、1900年10月3日の初演は大失敗に終わりました。
作品の出来に自信を持っていたエルガーはこの結果に憤慨しますが、一部の専門家・評論家は
この作品の非凡さに注目しました。その一人がドイツの指揮者ユリウス・ブーツで、初演に立
ち会った彼はすぐに歌詞をドイツ語に訳し、1901年12月19日にデュッセルドルフでヨーロッ
パ大陸初演を行って成功を収めました。これにより、ドイツ音楽界でエルガーは注目すべき作
曲家としての地位を確立します。リヒャルト・シュトラウスは本作に接して「イギリスの最初
の進歩的な作曲家マイスター・エルガーの成功と健康のために乾杯」とレセプションで祝辞を
述べ、エルガーを喜ばせました。そして1903年のロンドン初演により、イギリス国内でも本作
の評価は確立されました。
現在のイギリスにおいて、本作はエルガーの最高傑作の1つであると同時に、ヘンデルの「メサ
イア」、メンデルスゾーンの「エリア」と並ぶ三大オラトリオの1つとされています。
ヘレン・ワッツ(アルト)
ニコライ・ゲッダ(テノール)
ロバート・ロイド(バス)
サー・エイドリアン・ボールト指揮
ニュー・フィルハーモニア管弦楽団
ロンドン・フィルハーモニー合唱団
ジョン・オールディス合唱団