Youtubeからの転載です(
https://www.youtube.com/watch?v=Fn4G7kF3-KY)。
1993年5月、指揮者カルロス・クライバーはウィーン楽友協会での演奏会において、ウィーン・フィルを指揮してリヒャルト・シュトラウスの交響詩「英雄の生涯」作品40を演奏しました。完全主義者であったクライバーは自分の好みに合わない曲を演奏しないことで知られていましたが、この演奏会では「クライバーが新しい曲を演奏する」ということでチケットは早々に完売したといわれています。演奏会は5月15日と16日に開催され、それまでクライバーは「英雄の生涯」を手掛けたことがなかったにもかかわらず、見事な演奏をしてみせて絶賛されました。
このときの演奏はFM放送で公開されたほか、正規にソニーが録音して発売日まで決まっていましたが、クライバーが発売を許可せず、結局ソニーは発売を中止しました。その理由は、第6部「英雄の隠遁と完成」においてヴァイオリンのソロと伴奏が微妙にずれ、アンサンブルが乱れたと判断したためでした(ヴァイオリン独奏を務めたライナー・キュッヒルがアンサンブルの乱れを主張したともいわれています)。しかし、この録音は海賊版という形で少なくない数のCDが出回っています。
メンゲルベルクやカラヤンの録音と異なり、クライバーは各楽器の演奏バランスを重視して細かい調整を行ったことがうかがえ、間違いなく名演として記録されるべき演奏となっています。
なお、クライバーが「英雄の生涯」を演奏した公式記録が残っているのは、この1993年5月の2回の演奏会のみで、この点でも貴重な記録と言えます。
ライナー・キュッヒル(ヴァイオリン・ソロ)
カルロス・クライバー指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団