「ねぇねぇお兄様!次はあれに乗ろうよ」
ライスシャワーがやや興奮気味にトレーナーの腕を引っ張る
本日はライスの天皇賞連覇を祝して
以前行った遊園地…ではなく
千葉に座しておきながら東京を名乗る超有名な遊園地へとやってきたのだ
チームのメンバーとはいったん別行動で今はライスに付き添っている
「ビッグカミナリ山も宇宙山も楽しかったね」
意外にも絶叫マシンが得意なライスは十二分に夢の国を楽しんでいるようだ
道行く人間たちとは違って自前の耳がご機嫌に跳ねる
「コースターも好きだけど、ライス一番好きなのはこれなんだ」
ライスが指さしたのは
『小さな世界』
「ね、お兄様 一緒に乗ろ!」
小気味の良い歌に合わせて各国の民族衣装を着た人形、童話の人形たちが愉快に踊るなか
ボートに揺られていく…
「ふふ、なんだか絵本の中に入り込んだみたいで素敵だね」
ライスシャワーは目を輝かせる
「でも高校生が『小さな世界』はちょっと子供っぽいかな?」
少々顔を赤らめはにかむ
トレーナーは答えの代わりに頭を撫でた
外に戻ると日が落ちかけていた
「あ!そろそろパレードの時間だよ!みんなと集合して…ヒャァ!?
ライスシャワーは突如頭上に降り注いだ冷たさに声を上げた
仰ぎ見れば空は灰をかぶっていた
「そんな…」
瞬く間に地面が黒く染まる
トレーナーはとっさに彼女と『小さな世界』へと逃げ込んだ
「ごめんなさい…ライスのせいだ…」
消え入るような声
覗き込んだ彼女の顔は空と同じだった
「ライスが雨ウマ娘だから…みんなが楽しみにしていたパレードを台無しにしちゃった…」
トレーナーはしばらく黙り、突如として雨に飛び込み大仰にステップを踏んでみせた
「お兄様!? 何してるのお風邪をひいちゃうよ!」
「ライスシャワー!あの歌と違って世界は広い!
雨の中傘もささずに踊るのが好きな男が一人くらいはいるものさ」
自分の担当ウマ娘へ優しく微笑みかける
「それに『夢の国』を無礼めないことだ、この程度トラブルにも含まれないよ」
園内放送で雨の日限定のナイトパレードが実施されることが告げられた
そして自前のカッパを纏った『ガチ勢』が足早に歩を進める
「ほらね、それに君は勘違いしている、私はとても「ツイている」
こうしてレディを傘にエスコートできるのだからね」
鞄から傘を取り出しライスシャワーを入れてあげるロジャー・スミス