丑年末にやってきたすごい牛さん。
1話#00:15
2話#07:02
3話#14:47
平安時代の学者であった菅原道真を、天神様として祀る神社を天満宮と呼びます。道真は、「菅家」の名で百人一首にも歌が選ばれているように文芸に優れ、学問の神様として著名ですが、それ以外にも多様な逸話を残しています。とりわけ、丑の年丑の日丑の刻に生まれたという伝説に象徴されるように、牛との縁が深い話が多く残されています。なので、天満宮においては天神様の使いとして、御神牛様と呼ばれる牛の像が置かれています。御神牛様の多くは臥牛と呼ばれる伏せた牛の姿ですが、これは道真が遺言において、「我が遺骸は牛の赴く所に留めるように」とし、実際に道真の棺を牛が引く車に運んだ所、途中で突然牛が伏せて動かなくなり、そこを墓所と定めたという故事に因むとされます。天満宮の御神牛様を撫でると、天神様のご利益で頭が良くなったり、体の悪い所が治るとされ、「撫で牛」として古くから知られています。ちょっと変わった例では、東京の北野神社には、源頼朝が岩の上で休んでいる時、「牛に乗った天神様から、願いが叶うお告げを受けた」ことに由来する、「撫で岩」という、撫でると願いが叶うという牛の形をした岩があります。また、京都の北野天満宮には多くの御神牛様がいますが、その中でひとつだけ、九州の大宰府に流刑になった菅原道真の帰りを瞬きもせず待ち続けているとされる赤目の御神牛様がいます。両方とも、機会があればぜひ探してみてください。
なお、天満宮の「宮」とは皇室や、歴史上の偉人を祀る神社の総称で、徳川家康を祀る東照宮などがあります。宮のように、特別な称号を持つ神社は他にもあります。出雲神社に代表される大社は、複数ある同じ名前の神社の総本山に当る神社です。伊勢神宮などの神宮は、皇室に連なる方々や、縁深い神々を祀る神社です。そして、日本の神社の数を合計すると、なんと80,000を越える数となります。これは、国内の大手コンビニの合計店舗数57,000をゆうに超える、さすが八百万の神がいる国ならではの数であり、多くの人々が神々を祀ってきたことを伝えます。御神牛様たちは、これまでどれだけ多くの人々に撫でられてきたことでしょう、そしてそれぞれの時代で、人々は何を願って撫でたのでしょう。とても想像力を掻き立てられます。(外来生物学者 坂本洋典 フォト解説より)