ブルックナー作曲 交響曲第8番(初版) 第3楽章
指揮:ヴィルヘルム・フルトヴェングラー
演奏:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1954年4月10日(Live recording)
1954年4月10日に行われたニコライコンサートでのブルックナーの交響曲8番です。
第3楽章です。
この楽章は、この交響曲の中でも非常に荘厳で美しい旋律に満ちており、また、非常に多くの問題もはらんでいます。
その一つが同じ1890年第2稿を基にしているはずのハース版とノヴァーク版とで小節数が異なるということです。これは、一体どういうことなのでしょうか?
かつて、ハース版・1980年第2稿は、その出版時に、「初版譜はブルックナーの交響曲は弟子たちなどの第3者の手が入っている」と喧伝され、そのアンチテーゼとして原典版と称されてきました。
では、同じく第2稿を基にした原典版であるノヴァーク版となぜにここまで異なっているのか?
実は、校訂者であったハースの意向が多分に付け加えられた結果、新しい第2稿が生まれてしまったというのが真相らしいです。
第2稿校訂時に、ハースはブルックナーが第1稿から削除した箇所をいくつか復活させて第2稿と第1稿の折衷稿にしてしまいました。これだけでも大問題なのですが、ハースは、音楽的につながらない箇所は
自身で新たに作曲して繋げてしまった、と言われています。このことは、ノヴァークが第2次校訂を行う契機の一つになりました。
もし、初版群が他者の手の入った改竄版と呼ばれるのであれば、まさに、この第2稿ハース版こそが改竄版と呼ばれるべき存在というわけです。
実は、これ以前のフルトヴェングラーはハース版演奏時であってもハースの追加箇所は削除して演奏していました。もしかすると、音楽的に不自然であることに耐えられなかったが故の判断だったのかもしれません。
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