どうしていってしまったの?
──────────────
[待ち時間:30分]
坂のうえから鐘がひびいている
空中で沢山のビニール袋が泳いでいる
下駄箱に黄昏色のひかりが差し込む
まだ髪の毛の艶やかなこどもたちの笑い声が遠くからきこえる
藍色とくらいオレンジの混じり合った終わりに似た景色
わたしは前にもこんな空を見たことがあった
振り返ってはいけないとわかっていた
『あらゆる過去。』
『幽霊のようなきみ。』
『聴きたくもない正解。』
『全てのおわり。』
[1時間]
サイレンなんて鳴ってやしないのに
(わたしはどうやって帰ったの?)
…
[2時間]
『あんたがおいてったんだ。わすれたものぜんぶ。』
…
[3日目]
空中で沢山の******が泳いでいる
…
[終わり]
思考の欠片や真実が空き缶のように転がっている。
もっと早く分かって然るべきだった。
どうして眠れないのか。
どうして帰れないのか。
いや、そもそも会話そのものが、はじまりから存在していなかったのだ。
わたしはなんでもなく背伸びをして、そうして世界ではじめての、そして世界で最後の言葉を吐いた。
「わたしは、これから夢をみにいくんだよ。」