ハロウィンの季節なので
1話#00:15
2話#07:49
3話#14:12
ケルベロスは、ギリシャ神話において、冥界の王であるハデスが冥界の門を守らせている、犬の姿をした怪物です。地獄の番犬の異名を持つケルベロスは、生者が冥界に入ることも、死者が冥界から出ることも許しません。ケルベロスは、普通の犬とは異なり、3つの頭を持つため、1つの頭が寝ている時でも残りの頭は起きて見張りを続けることができるのです。さらに、蛇の尾を持ち、たてがみも蛇として描かれることもあるケルベロスのきょうだいには、2つの頭をもつ猛犬オルトロスや、ライオンとヤギ、それに蛇が合わさった姿のキマイラ、そして9個の頭をもつ大蛇ヒュドラなどと、錚々たる怪物たちが揃います。
そんなケルベロスの名を冠する生き物がいます。ハエトリソウという植物は、無視を捕食して栄養にするための捕虫葉という特殊な葉をもつ、食虫植物の仲間です。ハエトリソウの捕虫葉の内側にはセンサーの役割をする毛が生えられています。そこに虫が触れると、捕虫葉は左右からわずか0.5秒で閉じ、虫を葉の内側に捕らえます。しかも捕虫葉のふちには、虫を逃さないための長いトゲが生えています。ハエトリソウの葉の動きはあたかも、キバを剥き出しにした肉食獣が獲物を噛むときの口の動きのようです。このハエトリソウの突然変異で、捕虫葉が閉じた時の左右の外側に、それぞれ1つずつ捕虫葉が形成されるものが、ケルベロスの名を与えられました。昆虫からみると、まさに口を開けた3つの頭をもつ恐怖の怪物でしょう。ハエトリソウというと、夏になるとホームセンターでも見かける有名な植物ですが、他にも、ワーウルフ(人狼)や、エイリアン(異星人)、さらにはマスターオブディザスター(災厄の主)などと名がつけられている突然変異があり、こちらの姿の多様さもまたケルベロスのきょうだいに劣るものではありません。(外来生物学者 坂本 洋典 フォト解説より