ウクライナ戦争が欧州経済を圧迫する中、ある国だけは予想外の好景気に沸いている。それはロシアの隣国ジョージアだ。同国は、今年世界で最も急速に経済成長を遂げる国の1つになろうとしている。
プーチン大統領がウクライナでの戦闘を継続するため予備役の一部動員を発表して以来、招集される可能性があるロシア人など10万人以上が同国に流入した。
ジョージア最大の銀行「TBC」のCEOはこう語る。
ジョージア最大の銀行TBC ブツクリキゼCEO
「あらゆる産業が極めて順調だ。零細企業から大企業まで、小売業から様々な産業まで今年問題があったという業界は記憶にない」
統計によると今年少なくとも11万2000人のロシア人がジョージアに移住した。ブツクリキゼ氏によれば、こうした人々の多くがジョージアに新たな機会をもたらしているという。
「こうした移住者は非常に有用だ。彼らのおそらく大多数はとても若く、テクノロジーに強く、知識がある。われわれやほかのジョージア企業にとって、こうした人々を利用することは極めて有益な機会だ」
ロシアから戦争を逃れてやってきた人々は、大量のお金も運んできてくれた。今年4月から9月にかけて、銀行や送金サービスなどを利用してロシアからジョージアに送られたお金は、10億ドル(約1470億円)以上に及ぶ。ジョージアの中央銀行によると、これは昨年の同じ時期に比べて5倍にもなるという。
その結果、ジョージアの通貨ラリは3年ぶりの高値を記録。同国の2022年の経済生産高は10%の伸びを記録すると予想されている。これはベトナムや、石油資源の豊富なクウェートのような成長が著しい新興国をしのぐということだ。
だがこの成長を喜んでいる人ばかりではない。豊富な資金を持つ多くの技術系専門職を含む大勢のロシア人が流入しているため、物価は上昇。一部のジョージア国民が、教育や賃貸住宅市場から締め出されつつある。TBC銀行の分析によると、首都トビリシの家賃は今年75%上昇した。
多くの専門家は、戦争がジョージア経済に悪影響をもたらすとみていた。同国経済は、輸出や観光を通じて隣国ロシアと密接に結びついているためだ。両国は陸路で国境を接しているほか、ジョージアは寛容な移民政策をとっているためロシア人はビザなしで居住や就労、事業設立が可能だだが経済学者は、この好景気は長続きしない可能性があると話す。また企業経営者らは、戦争が終わってロシア人たちが帰国すれば、ジョージア経済がハードランディングに直面するのではと懸念している。
マクロ経済政策研究センター ケシェラヴァ研究員