ボカロクラシカクリスマス祭2022参加作品です。
英国ルネサンス音楽を代表する作曲家であり、数多くの合唱曲で知られるウィリアム・バード。今回はその中でも彼の存命中に人気だったという「眠れ、我が愛しい子」(Lullaby, My Sweet Little Baby)をエレノアさんの独唱と器楽伴奏でお届けします。
歌詞は(本動画では1番以降をカットしておりますが)3番まであり、マリアが泣いている幼子イエスをあやす子守唄と、ナレーターがイエス生誕時の出来事を説明する部分が交互に歌われます。歌詞にある「残酷な王」はマタイの福音書に記述されたユダヤ人王ヘロデを指し、彼が「新たな王が生まれた」という預言を恐れベツレヘムの赤子全員を皆殺しにしたエピソードが組み込まれています。
クリスマスソングとしてはなかなか重い題材ですが、このような憂鬱さを前面に出した芸術は「メランコリア」と総称され、当時のエリザベス朝では人気だったようです。いわゆる「コヴェントリー・キャロル」(16世紀に成立)も同じ題材に基づいています。
初出版は1588年、"Psalmes, Sonets and Songs"に5声の合唱曲として収録されたときのようですが、それ以前にコンソート(器楽合奏)と独唱のために書かれたものを編曲したと考えられています。
今回ソプラノ声部をトランペット、アルトとテナーをクラヴィコード、バスをヴィオラ・ダ・ガンバに割り当ててアレンジしてみました。買ったけど使ったことがない音源を試すのが主目的でしたが、なかなか独特な雰囲気が出ていると思います。お楽しみいただければ幸いです。
Lullaby, My Sweet Little Baby (1588)
作曲: William Byrd (ca. 1540 - 1623)
歌詞:不明
訳詞:やしろ
独唱: Eleanor Forte AI (Synthesizer V)
様々なバージョンの録音がありますが、タリス・スコラーズの録音は特に対位法の美しさが際立っていておすすめです。