2作目です。1日で作りました。
肩が上下する。
だんだんと脚が物臭になり、汗が疲労とともにベタついてくる。
冷たい風が顔に当たるとそれらを気化熱として弾き飛ばし、あと一漕ぎ、あと一漕ぎ、
ディレイラーのローラチェーンがカラカラと軋んでいた。
ふと気が付くと住宅街の奥の方までたどり着いていて、視線の先に見知った少女ー確かあるキャラクター(名前は忘れた)のグッズの収集癖を持っていたーを見つけた。
彼女は目が合うと、しまった、というような顔を浮かべた。(実際そう思っていると思うが)
「"ちょっと付き合って"」
私がそう声をかけると、彼女は顔を赤くした。もう何回目だ、その意味も分かっているのだろう。
「私、今用事が……」
「いいから来て」
「だから今は困るんですって」
「私は困らないけど?」
私がそう言うと彼女は観念したように私についてきた。俯いて、片手は裾を握り、
もう片方は彼のキャラクターの顔を磨り潰していた。
とはいえ、ここから学校へ走らせるのは酷だろう。
私はそこらへんの民家の家主の頭(厳密には"らしき部分")を打ち抜いて黙らせると、彼女を招いた。
後ろで何か呟いていた気がしたが、よく聞こえなかった。
階段を上り、ドアを開け、それなりに片付いた部屋に入った。
「じゃあ、準備して」
彼女は少し固まった後、行動を開始した。
前回までとの、"その"姿に至るまでの時間の変化が私を昂ぶらせる。
彼女をベッドへと押し倒すと、私のホワイトファングを彼女のティーカップへ沈みこませる。
牙は少しの抵抗とともにフチを貫通し、(なんと、貫通型なのは彼女の方なのに!)カップへは
紅茶がなみなみと注がれた。茶会にはふさわしくない、優雅とは反対の音が部屋に響く。
ここからはご想像にお任せするが、強いて表現するならば二人のランデヴーポイントでティーパーティーである。
窓を開け放つ。
冷たい風が一気に部屋へと流れ込む。
後ろのベッドの上で、誰かが身動ぐような気配がした。
目下。いつも通りの景色。
集団が一人の少女を追いかけ、
ある社長が融資を断られ、
覆面たちが銀行を爆破している、いつも通りの景色が、目下。
この非日常な部屋と日常な階下は二つではあるが、確かに一つのようでもあった。
空を見上げると、そこは呆れるほどに透き通っていて、
私はほんのちょっとの安堵に包まれるのだった。