おまたせ
1話#00:18
2話#07:06
3話#14:49
中国の伝説には多くの龍が出てくる。青龍が最もよく知られているが、格が上とされているのが黄龍だ。黄龍は中国の地理書「山海経」に現れる伝説の怪物のことをいう。黄金に輝く龍であるとも言われ天の四方を司る霊獣(四神)の中心的存在と呼ばれている。東は青龍、西は白虎、北は玄武、南は朱雀が守りを固めて、その中心に黄龍が存在している。つまり中国の黄河中流域の中国史の中心軸として王朝交代の主要舞台である「中原」を守護する存在である。黄龍は皇帝の権威を象徴する龍とされたが、後に麒麟と置き換え、あるいは同一視されるようになった。麒麟の体型は鹿、蹄は馬、尾は牛に似て、頭は一本の角があり、全身から5色の光を放つと言われる。
ところで、動物のキリンと架空の霊獣である麒麟とはどういう関係にあるのだろう。「キリン」と広く呼ばれるようになったのはキリンが日本に入ってきた1907年のことだ。
当時、恩賜上野動物園(現在の上野動物園)の園長であった石川千代松が日本で初めて動物を買うために海外に行った。ところが非常に高価であったため予算を遥かに越えてしまった。そこで千代松は「中国の霊獣の麒麟が手に入った」と連絡して予算をつけ購入したとされている。石川千代松は博物学者で科学的に深い知識を持っていたが、このように大法螺をふけるほどの大物だったのだろう。
アフリカで実際にキリンを見ると非常に活発なことに驚く。サバンナのアカシア林で樹を超えるほど背が高いキリンはよく目立つ。その分、ライオンなどに狙われることがある。襲われると長い首を使って対抗することもあるが最後は逃げしかない。逃げる時は長い首でバランスをとりながら走るが車などでは追いつけないほど速い。またサバンナから砂漠まで広く分布し乾燥にも強い。酷暑のナミブ砂漠で砂丘の間を悠然と歩くキリンは霊獣の黄龍のように怪物と言いたくなる生き物だ。(自然写真家 山口進 フォト解説より)