もう閉じていた 蝶の翅、開かない
無機的で歪な繭が蛹を見下ろしている
あまりにも強く煌めく光が未来に眩ませて
理性、現実 狂信(トウヒ)で腐食(トカ)し
虚ろな蛹 覗いた痩せた目
肥大した自我で器を満たして
かけられた温かな声が凍える刃と化したとき
救済はしかし弱者を追い詰める獣じみて、酷薄
部屋に張りついた暗がりが陽と混ざる
穏やかに満たされた世界は窓に投影(ウツ)されていた
哀れな蛹 遅すぎた了知
溶けだして腐る翅原基(ミライ)、美しく
「幼いころ描いた理想(スガタ)などあるはずもなかった」
全てが過ぎ去った 今さら神(ナニモノカ)に縋りついたとき
やがて見えたもの 確かに鮮やかな朝陽に違いなく
激しい雨と風、破壊的で残酷な語り手
後悔と諦念、蛹化不全(ナリゾコナイ)の哀れな末路
残った歪な繭 事切れて腐り溶けた揺りかご
最後まで朝陽の夢を見続けていた蛹……愚か者