世界カワウソの日は過ぎましたが
カワウソとは、その名の通り河川や海岸で暮らすイタチの仲間です。ニホンカワウソはその名の通り日本中の河川で暮らしており、かつてはに飛びとの身近な生き物でした。例えば、有名な妖怪の河童はカワウソの姿から連想されたとする説があります。
また、捕らえた魚をお供え物のように河原に並べるカワウソの姿から、獺祭という言葉が生まれたそうで、同名の美味しい日本酒を飲むたびにカワウソのことを思い起こします。
しかしニホンカワウソは残念なことに、綺麗な毛皮を目当てとした乱獲と、工事や汚染により河川の環境が悪化したことにより、急激に数を減らしました。1979年が生きている姿が観察された最後の年となり、2012年にレッドリスト上で絶滅種と指定されました。しかし、元々が身近な動物だっただけに、様々な地域で生存が噂されました。かくいう私も、北海道の奥地でイタチに似た生き物が湖沼を泳ぐ姿を発見し大喜びし、その正体が外来種のミンクとわかり、何とも言えずがっかりとした記憶があります。
その中で、2017年に驚きの報告がありました。長崎県の対馬で、カワウソが泳ぐ姿が観察されたのです。残念ながらその後の遺伝子調査で、発見されたカワウソは韓国に分布しているユーラシアカワウソであることが明らかになりました。少なくともオスメスともに2個体が確認されたユーラシアカワウソが元々対馬にいたのか、海流に乗って泳ぎ着いたのか、あるいは人為的に持ち込まれた外来生物なのかは未だ不明です。ただし、対馬には、カワウソが暮らせる環境が残っていることは素晴らしい事実です。この対馬の自然を守るべく、私は今、ツマアカスズメバチという、対馬に持ち込まれた特定外来生物の防除を進めています。(外来生物学者 坂本 洋典 フォト解説より)