キネティックノベル大賞向けに一曲書いてみました。
思い出とか寂しさとか悲しさとか美しさとか、そういったものをたくさん込めてみたつもりです。
【BGM/テーマ】『カストールの魂はいずこへ』
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いつか一緒に星を数えた草の丘。
ここで過ごした彼女との代えがたい日々が、大切な時間が、回り灯籠のように明るく揺れて解けていく。
虚ろな瞳で指さす先を見上げれば、イルミネーションのような星の海。
ふたりを見下ろす煌めきは火花のように儚く輝き、そしてゆっくりと地平の彼方へと落ちていった。
最後の夜が終わる。
彼女の姿が消えた灯火のように霞んで滲む。
共に過ごした日常も、並んで眺めた星空も、耳の奥に残った澄んだ声色も、全ては熱を持ち輪郭さえも曖昧にぼやけゆく。
………丘を駆け上がる風の音は、まるでこの世界に残された少女の心を揺らす、嗚咽のようだった。