月と剥製
ねぇ君は何を見たの
ねぇそばには誰がいたの
私をおいて君は黙った
今際の言葉に影がかかった
セミが鳴いた青い日だった
陰る顔にみとれていた
僕にはとどかぬ高嶺のうえで
明るさをはじく月のよう
なにもかもだれもいない僕らは
叢雲に風が立ち無理だね
くるしみもおぼえてない最後に
二十六夜で消えた
幸せを不幸の始まりといった
輪郭が見えるほど切ない
君の期待の真逆をとった
下手くそな歌でも歌おう
いざよえばサヨナラさえも吃った
きみのこと 知らなきゃよかった
感情を隠したエイトケン
よろこびも知るほど胸が痛い
あなたが欠けた日々が続く
ただ会いたくては匈(むね)が痛んだ
宛名もわからず寝床は消えた
すさんだ心は夜を拒んだ
不幸の花が咲き乱れては
私の過去を摘んでは荒れた
僕には見えない傷をかくして
明るく泣いて君は笑った
僕の世界君はいない 遠くへ
失って悲しむの 馬鹿だね
もう一度初めから 見えずに
静かな海へと 消えた
たった一人で抱えていたの
私にはみせないように
陰でこそ君の苦しみが見えた
おぼろげに雨夜でぬれた
嘔吐いては動悸がやまない
かすかな声は届かないのだ
つながった過ちの点と線
君のこと知るほど胸が痛い