〇私と奄美
沖縄本島から急遽奄美大島へ向かうこととした私は、旅行会社に飛び込み交渉。
全ての手配が順調に、とはいかず、一番安い宿をという私の意図がなかなか理解されませんでした。
それでも無事奄美に到着した途端、私は何とも形容しがたい肩の重みのようなものを感じました。
私には霊感はあまり無いと信じていたのですが、此処にはなにか違うものがあると感じたのです。
奄美の言葉は、ウチナーグチと似ているところもありますが、
ご老人の言葉はさっぱりわからないことも多く、そこが私が安宿を選んだ目的でもあったのです・・
〇信仰の島 奄美
本島と周辺の島々との違いは沖縄のそれにも似て、加計呂麻島にはさらに古い奄美の魅力があります。
本島ではリゾート気分もそこそこ味わえるのですが、朝崎郁恵さんの産まれた加計呂麻島は、
素朴、というよりまさに信仰の島でした。
四十年も昔のこと、いまのように水上タクシーやフェリーで簡単には行かれません。
山あり谷ありの起伏に富んだ地形は、
朝崎郁恵さんの渾身の唄声に反映していると、聴いていただければお分かりになると思います。
奄美にはノロと呼ばれる女性祭祀がいて、集落の代表となり神々に祈りを捧げていました。
有名な花富集落にはミャー(広場)、ノロが祭祀を行うアシャゲ・トネヤなどが残り、
独特な神空間が残っています。
〇唄者(うたしゃ)朝崎郁恵さんのシマ唄
「島唄」という曲名の歌があるおかげで分かりにくいのですが、
大まかには奄美・沖縄のシマ唄は、いわばこの地方の歌を広く指しています。
彼女を育てたおばあさんの子守唄もこれに含まれますが、
その起源はあるいは江戸時代とも言われます。
このため、朝崎郁恵さんの唄は他の奄美の唄者のシマ唄とも違う、
「朝崎郁恵さんのシマ唄」が生まれました。
厳密には沖縄のシマ唄は島の歌、奄美のシマ唄は集落の歌、このあたりも大変興味深いところです。
シマ唄の先祖、神唄を現在に残す朝崎郁恵さんの唄、ぜひ生歌を聴いてみたいものです。
〇あはがり
暗がりの反対語が「あはがり」です。
万葉言葉とも言われる古い言葉です。
前作の説明に書いた「なんくるないさー」の本来の意味と、
奄美の自然信仰が結びつくのかもしれません。
元は「徳之島節」という歌、これに朝崎郁恵さんが詞を付けたものです。
NHKの「新日本風土記に使われていますが、なんとオケが付いているばかりでなく、
声にエコーまでかかってるじゃないですか。
もっとソリッドでシンプルなアレンジ・バージョンを探してやっと見つけたものです。