年末に入り、ラボ内が慌ただしくなってきた頃のことである。
たまたま通りかかったレッスン場で、珍しく練習に没頭するれぷさんを見かけた。
しかし、集中というには焦りめいた空回りを感じる。怪我をしては大変なので声をかけてみた。
「焦り…そうですね。その通りです」
言われて自覚したのか、れぷさんは苦笑交じりに肩を落とす。
聞けば、以前見た全力かのせなさんに衝撃を受けたとのこと。
普段同スペックを主張しているからこそ、オリジナルとの差に愕然としたのだとか。
次いで、これはかのせなさんには内緒ですよ、と前置きして。
「今は当人にその気がなくとも、もしかしたらいつかかのせなさんがステージに立つ日が
来るかもしれません。その時、誰かとユニットを組むかもしれません」
察した。なるほどそういうことか。
「はい。例え事務所のアイドルちゃんたちと言えど、これだけは譲れません。
かのせなさんの隣に立つのは、れぷさんです」
それは妹分の矜持、だけではないだろう。
確かにれぷさんは甘え上手ではあるけれど、今のポジを嫌ってもいないのだろうけれども。
それでも彼女は「かのせなさんの相棒」でいたいのだ。
だからこそ差が付くことを、離されていくことを認めない、認めたくない。
理屈は分かった。
けれどパートナーを目指すなら、それこそ同スペックの必要はない。
瓜二つ、完全シンクロしたコンビなぞ無価値だ。完全対象が欲しければ鏡でも置けばいい。
追うのはいい。でも、かのせなさんに成る必要はない。
名前こそ「レプリかのせな」だが、もはや君はコピー品ではなく、一つの人格だ。
逆に言えば、かのせなさんができないことをれぷさんはできる。
「つまり、競うな持ち味を活かせッ!
同じセイバーでもマグナムではなくソニックを目指せと」
…うん。合ってるし分かりやすいけどなんだろうこの気持ち。
ハンギョ割と良いこと言ったと思うよ?
「しかし、れぷさんだけの長所とか、本当にあるんでしょうか」
あるとも。では試しに軽くやってみようか。
せっかくだし簡素なレッスン場じゃなくてきちんとしたステージ用意して。
「分かりました。じゃあ教授に乗せられてみましょう。
見せてやるぜ、れぷさんのみが持つ無限の可能性を!」
2023/12/24追記・サムネ静画im11336334
2023/12/25追記・生足差分
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