「私が未来に連れて行くから」
勇者シロの死から12年の月日が経った。今日日は魔王討伐を祝した年に一度行われる催しにより、街はファンファーレや紙吹雪、出店などで賑わいを見せていた。
正直、こういった催し物というのは苦手だ。うるさいし。
でもこの催しだけは不思議と嫌いでは無い。
晴れ晴れとした空の下で初めて彼にあった日のこと、ジメッとした曇りの日に我を忘れてお酒を飲んで怒られたこと、うるさいくらいの雨の日に救えなかった命に祈ったこと。
旅立ちと同じ、太陽が優しく指す日に安らかな顔で終わりを迎えた彼のこと。
その全てをこの催しの度に思い出す。
たった10年ぽっちの旅路だったが、今思えばその一節一節が眩しくて、暖かいものだったのだと、今更気づいた自分におかしくなって鼻で笑ってしまった。
少し穏やかな気分をそのまま持って帰るように足を進める。きっとここから先何十何百何千と時が経っていくうちに、人々は勇者シロや僧侶ジョー、魔法使い虚音イフのことを忘れていく。別に寂しくなどはない、慣れたものだ。それでもここから先、また1人になる自分に、あの時と同じ後悔はさせないように今はあの時の旅路を辿って、また終わりを迎えよう。
街の外で笑い合いながら話している2人の仲間に遅れた詫びを入れながらアタクシは少し暖かいものを感じた。
音楽:YOASOBI 様
https://www.nicovideo.jp/watch/sm42824667UST:もくま 様
https://www.nicovideo.jp/watch/sm42941930歌:青山龍星(A.I.VOICE)
有響シロ
虚音イフ
玄野武宏(synthesizer Vゲンブ)
真歌ジョー