【劇場版アニメ デッサン】
同級生の真田愛に想いを寄せる主人公の龍太(高校1年生)は、愛目当てで美術部に入部。
大好きな愛のポートレートを描くうちにみるみるその才能を開花させていく。
そんな充実しながらも思いを告げることができないある日、愛が病に倒れる。愛の余命は半年。
やせ衰えていく愛が龍太に言った言葉「お願い龍太君。わたしを描いて、この世界に残して」。
その日から龍太は毎日病室に通い、狂ったように愛を描く。
しかし、何度描いても愛の顔は曇ったまま。病は容赦なく愛の体を蝕み、美しさも奪っていった。
龍太は知る。次の一枚がおそらく最後だ。描き始めてどれくらいの時が過ぎただろう。描き終えたその朝、龍太の意識は途切れた。
夢の中で愛が立っていた。かつての美しい姿で。彼女は優しく微笑みながら言った「合格」。
目が覚めて知った。愛が死んだ。
龍太の目に光がないまま、季節だけが流れていった。
一年後、愛の命日にあたる日の放課後、突如校内放送で部室に来るよう言われた。声の主は不明。
愛が死んでから部室を訪れたのは前回一度だけ、愛を描いた85枚ものデッサンを封印するため。
部室の扉を開けて中に入ると、イーゼルに立てかけられた一枚のデッサン。
龍太の全身を衝撃が駆け抜ける。
イーゼルに立てかけられていたのは愛の絵。それも最後に描いたものだった。
だれが何のために?
部室を見回してみてもだれもいない。しばらく待ってみても誰も来ない。なんの悪ふざけだ? 悪趣味にしてもほどがある。憤りで体が熱くなりかけたその時、怖気に心臓が縮んだ。
「久しぶり、龍太君」
それはまぎれもなく真田愛の声。しかも声はイーゼルに立てかけられた愛の絵から発せられた。
震える体をこらえながら愛の絵に目をやる。
「びっくりさせちゃった? ごめんごめん。わたし…わかる?真田愛」
間違いなく自分が描いた愛の顔が口を開き、表情まで変えながら語りかけてくる。
自分はついにおかしくなってしまったのか……。気づけば足から力が抜け、その場にすとんと尻をついていた。そんな龍太に絵の中の愛はおかまいなしに話しかけてくる。
「あちゃあ。そりゃそうなるよねぇふつう。ほんとごめんね。でもね、あなたが描いてくれた絵のおかげでわたし、あの世とこの世の間、【狭間の世界】にとどまることができてるの……」
絶望から一転、龍太の目に確かな光が蘇る。しかしやがて龍太は願う。愛と同じ【狭間の世界】に行く方法を。そしてそれを見つけてしまうのだった。