「あのさ、プーアル」ヤムチャ様はうんざりした表情で手に変化した僕を睨む。「な、なんでしょうか?」「昨日はハシカンの手、今日はモナリザの手…どれも同じじゃないか」ヤムチャ様はズボンを履きなおしTVを付けてソファにどっかりと座る。「手でしてくれるのはありがたいけど、もういいかな…変化解いていいぞ」「…」僕は瞳に涙を溜め、ヤムチャ様の家を後にした…
「僕なんか、誰にも必要とされないまま一人ぼっちで死んじゃうのかな」川に石を投げ入れ、広がる波紋と揺れる水面を漫然と眺め、涙を手で拭っていた。「僕なんか!」口にしたその時だった。「キミ…本物のケモ…ゲフン!獣人かね!?」虎の姿をした人があんぐり口を開けていた。僕が珍しいのかな。「そうですけど…」「あ、あのさ!近くでバーがあるんだけど!キミを招待したい!お金タダでいいから!ね!」強引な虎男は僕の手を掴むとグイグイと町の雑踏へ誘う。薄暗い路地裏に、男の言うバーがあった。紫のネオンの主張が激しく眩しいが「ケモバー…?」そう書いてあった。
中に入るとアルコールの匂いに混じりケミカルな匂いが鼻腔をゾワゾワさせた。「マスター、アニマリンカクテル一丁!」「アイ…」マスターの象男はケミカルな液体とお酒を混ぜて飲料をキリン男に渡していた。聞いたことがある。人間の間で流行した獣人になれる薬品アニマリンを、ここではお酒に混ぜ提供しているのだ!「あの…僕帰ってもいいですか…?」「おーいみんな!本物のケモのお客人だ!」バーの全員が僕を見つめる。グラスを置いたり、煙草を落としたり…僕の来店に驚いているようだった。「ケーモ!ケーモ!」客の一人の豹男が高らかに叫ぶ。他の男達も呼応してコールする!ケーモ!ケーモ!ケーモ!ケーモ!僕は心底怖かったけど、強引に男達の中に放り込まれ胴上げされた!なんか僕、王様にでもなったみたい。男達の中の一人、犬男が気を付けの姿勢で挙手をした。「クンカクンカ許可願います!」何のこと…?わかんなかったから僕は「いいよ!」と言ってしまった。その時、男達全員で体を押さえつけられ、鼻を荒立てて僕の体臭をみんなして嗅いでくる!花に集まる虫の様。無数の顔が僕を取り囲みスーハ―匂いを嗅いでくる。「クンカクンカありがとうございます!ありがとうございます!んあっ!」中には倒れる獣人もいた。それでも他の人達が匂いを肺に取り込もうと押し合い僕を巡っての乱闘も起きていた。このままだと僕は潰される…その時だった!
「プーアル!」ヤムチャ様だ!バーの戸を蹴破って助けに来てくれた!ヤムチャ様はあっという間に男達を薙ぎ倒し、僕を抱き上げてくれた。「変な店に入っていくお前が見えたから…」あれ、何だろう。目が涙で滲んでよく顔が見えないや。へへへ!やっぱりヤムチャ様は僕の憧れだ!