昔からずっとその辺で有名だった廃墟があってね。言うなれば、地元の怖い場所ランキングでトップクラスに入るような場所だよ。言い伝えによると、そこは以前は繁盛していた旅館だったらしいんだけど、ある日を境に突如として閉鎖されちゃって、そのまま廃墟と化したそうな。
で、その廃墟の中には「影」と呼ばれる何かが住んでいるとか。怪談が好きな俺たちの小グループは、夏休みのある日、勇気を出してその廃墟を探検することにしたんだ。
真昼間に行ったんだけど、廃墟に足を踏み入れると、外の暑さから一転、ぞってりとした寒さが背中を這い上がる感じがしたよ。なんとなく空気が重くて、息するのも一苦労だった。
最初はワクワクしてたんだけどね、廃墟の奥に進むにつれて、だんだんとそのワクワクが不安へと変わってきたんだよ。壁には不気味な落書きがあったり、時々変な音が聞こえてきたり。
で、最も恐ろしかったのは、奥の部屋に差し掛かったとき、一瞬だけ見た「影」。それは、人っぽいけど人じゃないような、絶えず形を変える暗闇の塊みたいなもんだった。ビビってそそくさとその場から逃げ出すことになっちゃったよ。
後日、地元のおじさんにその話をしたら、「あの廃墟、以前は旅館として使われていたけど、そこの主人が客を何人も失踪させてたって噂があってね。警察が捜査に入ったところ、地下室で結構な数の未成年の遺体が発見されたんだよ。その後、旅館は廃墟と化し、言われることには、あの影は主人が犠牲者たちを犠牲にしていた悪魔的な何か。まあ、本当のところは分からないけどね」と言っていた。
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