教室でたまたま席がとなりになった花隈さん。
読書が好きなようで、休み時間にはよく本を読んでいる。
第一印象は、クールでおとなしい感じの女の子。
でも軽音楽部でドラムを演奏しているのを見たときは、教室での様子とのギャップに驚いた。
すっかり花隈さんのことが気になった僕は、休み時間に話しかけてみることにした。
「花隈さんって、どんな本が好きなの?」
会話のきっかけが思いつかなかった僕は、普段読書なんてほとんどしないくせにそう話しかけていた。
そんな僕の問いかけに嫌な顔一つせずに、花隈さんは今読んでいる本の内容と、同ジャンルのオススメを教えてくれた。
それから毎日少しずつ、花隈さんと話す時間が増えていった。
花隈さんのことをたくさん教えてもらった。
抹茶が好きなこと、カメラにはまっていることや、軽音楽部での先輩達とのバンド活動のこと。
花隈さんは僕のこともたくさん聞いてくれた。
交わすのはいつも他愛もない会話だったけれど、
クールだと思っていた彼女が見せる色んな表情に、僕はすっかり惹かれていった。
ある日、僕は友人から野球観戦のチケットを譲り受けた。
「お前最近花隈とよく話してるし、誘ってみたら?」
ありがたくチケットは頂戴したものの、花隈さんが野球に興味があるなんて話は聞いたことなかったし、
誘っても断られるだろうな…と思い、他の友人を誘おうかなと考えていた時だった。
「それ、何のチケット?」
花隈さんが声をかけてきてくれた。
意を決して、ダメもとで僕は二人で見に行ってみないか誘ってみることにした。
彼女が好きそうな抹茶系の球場グルメや、写真映えしそうな球場のフォトスポット。
僕がプレゼンできる、最大限の生の野球観戦の魅力を花隈さんに伝えてみた。
「その日は部活も休みだから、行ってみようかな」
彼女がそう言ってくれた時、僕はその場で飛び跳ねたい気持ちを抑えるのに必死だった。
そして当日、花隈さんは初めての野球観戦を楽しんでくれているようだった。
退屈だと思われたらどうしようと不安だったが、教室で話しているときの柔らかい表情を見せてくれたのでとても安心した。
「誘ってくれてありがとう、またいきましょう。」
彼女は別れ際にそう告げると、その後に小さな声でこう付け足した。
「次は応援歌も覚えておきます」
立ち絵:自作
ホームランコール:CeVIO AI 花隈千冬
歌:Synthesizer V AI 花隈千冬